原作・卒業後、おつきあい中。



言葉はいらない



久美子がおもむろに手を伸ばし、紙に何やら書き始めた。


唐突な行為に唖然としていると、久美子が書き上げた紙を見せながら説明し始めた。


「ほら見ろよ、こうするとわかりやすいだろ。」


久美子は今、俺の両脚の間にすわり上半身下着姿(俺が脱がしたのだ)で

やっぱり上半身裸(俺の手際に抜かりはない)の俺に

後ろから抱きしめられている。


久美子の髪をほどき、うなじに口付けしながら感触を楽しんでいた俺は

ローテーブルの上で久美子が書き上げたものを見た。


・・・グラフ??

この状況でなんでグラフ???


俺の混乱をよそに、久美子はのんきに説明を続ける。


「だからさ、横軸を時間tとするだろ。

縦軸は、まあ任意の量ってことでなんか適当にnとかにして。

すると、関数Hがこうなっているのに対して

関数Iはこう、単調増加じゃなくて下に凸なんだろ?」

にっと笑いながら振り向いて俺に確認する。


「ほらな、この二つの関数の形状が全然違うのがわかるだろ?」


「ああ。」


ため息をついて相づちを打つ。


「だから、この二つの間には相関はないんだ。それはわかるよな?」


「わかるけどっ(怒)、それが何?!」


ちっとも進まないコトにいらだって、久美子のブラのひもを少々乱暴に外す。


「だーかーらー、関数Iがお前の愛情で、関数Hがエッチの回数!

横軸が付き合ってからの時間を表してるんだってば!

ちなみに、Hの方は近傍3点の単純平均で補完して平滑化してるんだ!

見やすいだろ!」


「で?(怒)」


ブラのホックを外して落とす。


「エッチの回数と愛情に、相関はないの!こらっ。」


「ふーん。」


そう言うことを言いたい訳か。よしよし。

いつもコイツのこういうところにびびってしまって有耶無耶にされるからな。

今日はそうはさせないぞ。

集中だ、集中するんだ、俺。


停止しそうな脳を必死になって呼び覚まし、

拡散していく血流をもう一度呼び集めて、

今度はジーンズのファスナーを下ろしていく。


「だから、エッチしなくても、お前の愛はわかっているから、あ、こ、こら!」


胸の頂をちょんと摘み、反対の手を下着の中に滑り込ます。


「わかったよ。比例するよう頑張るから・・」


甘い声で囁きつつ、両手を縦横無尽に使って久美子を翻弄しつつ、

身体を反転させて押し倒す。


「ち、違っ、・・ぁん・そう言う意味に取るなっ、だ、あん、だめ・・」


「問・答・無・用!・・・ん・・・ん」


そのまま久美子の上におおいかぶさって口を塞ぐ。


「あん、や、ってばぁ。ん・・・あん・・・」


「もう、黙って・・・ん・・」


「ん、んーっ・・・」



こうして、恋人たちの熱い夜は更けていく。

グラフにはI(s)の他にI(k)も書いてあって、

途中からI(s)よりもI(k)が大きくなっていることに、

慎はまだ気付いていない・・・


















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バカ小話「恋の数学」シリーズ。

今回は慎ちゃんリベンジなるのでしょうか。

どんなことでも関数化してグラフにしてみると理解しやすくなる、

と、なぜか理系はみんな固く信じています。

ちなみに、

 I(s):慎の愛、I(k):久美子の愛、H:エッチの回数、t:時間、n:任意の量

つきあい始めた日を時刻ゼロとします。



2009.2.18 ツキキワに投稿

2010.7.6   サイトにアップ


双極子