※原作・卒業後、おつきあい中。ほんのちょっぴりピンク風味。苦手な方はお気をつけ下さい。
さわるな
「重い・・・」
久美子は自分の背中に張り付いている男に向かって抗議する。
「んー・・・」
久美子の背中にもたれながら生返事をしたのは、恋人である沢田慎だ。彼は今、久美子の背後から首の当たりに手を回してぎゅうっと抱きつきながら体重をかけている。
背中に感じる温かい肌の感触と心地よい圧迫感が久美子を落ち着かない気分にさせる。久美子と慎が付き合い始めて、もう半年以上が経っている。お互い慣れぬ男女交際ではあるが、滞りなく「男女の営み」とやらも済ませ、順調に交際を重ねている。
慎も若く健康な男子であるからには、それなりの欲求も当然あり、肌を合わせる機会もしばしば訪れる。
しかし決してその回数は多い訳ではなく、どちらかと言えば慎は淡白な方らしい。直接肌を合わせて濃厚に互いを確かめ合うのも魅力的だが、膝にもたれかかったり、肩を抱き寄せたりと、軽い接触の方が好きだと慎は思う。
そして・・・
「こら!この手は何だっ。」
背中にもたれている慎の手が脇腹から前に回って、久美子の胸を包んでいる。
指先がふにふにと頂きを刺激する。
「んー、スキンシップは大切だろ。」
言いながら反対の手で久美子の内股を摘む。
「だからって!こら、やめろっ////」
そう、慎はこう言う風に久美子にいたずらするのが大好きなのだ。大抵の場合、中途半端に刺激されておしまいで、なし崩しに最後まで行くことはあまりない。
慎の方は気持ちいい訳でもなく、たいして面白いとも思えないのになぜこんなことをしたがるのだろう。久美子は不思議でならない。
「こんなことして何が面白いんだっ。お前、楽しいのか?」
「うん、楽しい。」
「なんでだよ!」
「お前が感じてる声聞くのが好き、だから?」
「なっ////」
「それに、なんか安心する。」
「安心?」
「そ。だから、さわらせて。」
「こ、こら!」
「いーじゃん。減るもんじゃなし。」
「うるさい、あたしのは減るんだ。」
「そーなのか?・・・これ以上、胸が減ったら困るな。」
「んだとうっ!なんか文句あんのか?」
「トンデモゴザイマセン。満足してますよー。」
言いながら慎はまた胸を弄る。
優しくて官能的た指の動きに、久美子の身体が反応する。
始めのうちは恥ずかしくて逃げ出してしまいたいと思ったくらい困った男女の営みだが、文字通り身体の隅々まで慈しんでくれるような慎に身を任せているうちに、いつしか慣れ、そして溺れ、無しでいられないような、そんな気持ちになっていった。
普段は自分の気持ちをいつも抑えて久美子を優先するような、少し及び腰なところのある慎なのだが、肌を合わせている時だけは、すべてをさらけ出して打つかってきてくれると久美子は思う。それが嬉しくてすっかり慣れた今では心待ちにするようにまでなっているのだ。
だから、こう言う慎のスキンシップ好きは、心底困る。自分ばかりが一方的に翻弄されて、ひとりでドキドキして。期待してしまう自分がひどく恥ずかしい。
甘えたように抱きついていたずらを仕掛けてくる慎に、久美子はため息を付いた。慎の体温は心地よいものだが、この熱をどうしてくれる。胸に伸びてくる手を追い払いながら、自分を持て余して久美子は胸の内で愚痴る。
ああ、もう。
頼むから、さわるな!
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こんにちは、双極子です。
ここまでお読み頂きましてありがとうございます。
おつきあいにもすっかり慣れていちゃこらしているふたりです。
なんだか甘えん坊さんな慎ちゃんとちょっぴり大人な久美子さん
お楽しみ頂けたでしょうか。
2010.3.29 ツキキワの自由投稿ルームに投稿
2010.6.6 UP